長野県内における取り組み

活動内容

食べる楽しみを支える会のキックオフ基調講演として、日本社会が抱える超高齢社会ゆえの問題点、摂食機能障害を呈する小児・高齢者の現状についてお話させていただきました。旅行やスポーツなどに比べ、食べることは比較的最後まで残される楽しみです。しかしながら何らかの異常によりその楽しみすら味わえない方が県内にも大勢いらっしゃいます。咀嚼すること、嚥下することが運動ですので脳神経系の異常や口腔・咽頭の形態異常により摂食機能障害が生じてしてしまいます。また、加齢変化も摂食機能の低下に大きく影響し、緩徐に進行する疾患と併せて自覚症状がないまま機能低下が進行ししまうこともしばしば見受けらます。

他の障害や疾患と同様に早期発見早期治療が摂食機能リハビリテーションにおいても重要です。そのためには軽微に本人や家族などが気づくことが大切になります。そこで摂食機能障害の初期症状とそれを発見するための観察ポイントについて概説いたしました。私が診断において基本としていることは正常な摂食機能との違いを見落とさないことです。そのためには正常な形態と機能を熟知する必要があります。そこで、最低限押さえるべき摂食の解剖と生理もお示しいたしました。

また、リハビリテーションの実施においては「窒息や誤嚥性肺炎」の予防に重点を置いています。すなわち安全に指導管理することが最も大切であると言えます。そのためには正確な機能診断が必須であり、機能とマッチしていない食形態や食事姿勢は可能な限り避けなければなりません。患者の「美味しく食べたい」という希望を叶えるためにも無理なゴール設定をせずにショートゴールの積み重ねを目指しています。ショートゴールは患者が諦めることなく取り組めるよう配慮しています。

以上を踏まえた本学における臨床の一部(写真)と行政(塩尻市)や郡市歯科医師会(上伊那歯科医師会)との取り組みを紹介いたしました。これからの「食べる楽しみをささえる会」の参考にしていただければと思っています。

松本歯科大学病院摂食嚥下機能
リハビリテーションセンター
松本歯科大学地域連携歯科学講座 蓜島 弘之